スペシャルインタビュー

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【石田ひかりさん】動物保護活動に打ち込む思いとは

掲載日:2026.01.30

俳優の石田ひかりさんは、子育てが落ち着いて自分の時間が持てるようになった頃に、ボランティア活動を始めました。現在は、動物保護活動やフードバンクの支援などに取り組む石田さん。ボランティアを続ける原動力は、「誰かの役に立てたかも」という充実感だといいます。ボランティアに関心を持ったきっかけや、活動を通じて感じたこと、初めてのボランティアに一歩踏み出すためのアイデアについて聞きました。

寄付から始めた社会貢献活動 初めてのボランティアで感じたのは、自分と社会とのつながり

――石田さんには二人のお子さんがいます。昨年、下のお子さんが二十歳を迎えられましたが、子育ての日々はどのようなものでしたか?

子どもたちの手が離れたことで、ようやく自分が自由に使える時間が戻ってきたような感覚があります。振り返ると、上の子が10歳になるまでは怒涛の日々でした。

昔の私は真面目で融通が効かないところがあって、あらゆることを「しなければならない」と思い込んでいました。今思うと、お洗濯なんて毎日しなくたってよかったんですけどね。

年子の次女が生まれてからは、どうしても手が足りなくて、母やシッターさんに助けてもらいました。いろいろな人の愛情や価値観に触れて育ったことは、娘たちの強みにもなっていると思います。

無理はせず、大変なときは助けを求める。完璧を目指す必要はないと、子育てを経験して私の考え方も変わりました。

――子育てが一段落した今、石田さんはボランティアに熱心に取り組んでいますね。関心を持ったきっかけを教えてください。

15歳でデビューして以来、ごくわずかですが寄付を続けてきました。クリスチャンの母から「人の役に立つことをしなさい」と促されて始めたのですが、その頃はまだ子どもだったので、寄付に納得できていませんでした。

でもその後、黒柳徹子さんにお話を伺う機会があって、徹子さんのような活動はできないけれど寄付なら私にもできるなと思ったんです。それからは自分の意志で、「国境なき医師団」や「ユニセフ」に毎月寄付をしています。自分が子どもを持ったのも大きかったですね。飢えに苦しむ子どもがいることに、より痛みを感じるようになりました。

今は「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の支援や、「フードバンク山梨」さん、動物保護団体の「みさきアニマルすまいる」さんのお手伝いをしていますが、人や社会の役に立つこととして寄付をする習慣があったことが、ボランティア活動につながっています。

――初めてボランティアに参加したときのことを覚えていますか?

娘たちが通っていた学校では奉仕活動を大切にしていて、障害のある方々が暮らす施設でベッドのシーツを替えたり、洗濯物を畳んだりといった活動が保護者にも当番制で回ってくるんです。初めて参加してみて驚いたのは、こんな簡単にできることでも誰かの役に立てるということでした。社会と自分とのつながりが感じられて、心が満たされたこの体験は、今でも忘れられません。

「もしかしたら誰かの役に立てたかも」という気持ちは、ボランティアを続ける原動力になっています。実際にボランティアに参加するハードルの低さを、学校の活動を通じて教えていただきました。

「間に合ってよかった」 多頭飼育崩壊の現場で受けた衝撃 

――動物保護団体のボランティアに参加するようになった経緯は。

昔から動物が好きで、いつか自分も保護活動をしている団体のお手伝いができたらいいなと思っていました。動物保護団体を立ち上げた姉(石田ゆり子さん)の影響も大きいですね。姉ほど本格的にはできないけれど、子育てが落ち着いて体も空くようになったので、自分で情報を探してみたんです。

そうしてたどり着いたのが、「みさきアニマルすまいる」さんでした。施設を作ろうとクラウドファンディングをされていた頃からなので、もう5、6年のおつきあいになります。仕事もあるので毎回は譲渡会に参加できませんが、SNSでの情報発信など、自分にできることをしています。ボランティアというより、「お手伝い」をしている感覚です。

――動物を保護する現場に立ち会われたことはありますか?

2年前に、多頭飼育崩壊の現場に同行しました。認知症のおばあさんがダックスフントを50匹まで増やしてしまったと聞いたときは、にわかには信じられなかったのですが、現場に行ったら大袈裟でなく、本当に50匹いました。

まずはこれ以上増えないようにオスとメスを分けるところから始めて、その日は6匹を保護。ウンチまみれで爪も長かったので、きれいにしてから動物病院で検査をしました。

施設のスペースや人手の関係上、どうしても一度に50匹保護するのは難しくて……。5、6匹引き出しては預かりボランティアさんに託し、譲渡会を何度も繰り返して、全頭救出まで2カ月かかりました。

多頭飼育崩壊の現場でのボランティアの様子。活動はSNSで発信している。(石田さんのInstagramより。事務所提供)

――現場で、どのようなことを感じましたか?

何年も外の空気を吸えていないような子もいたので、「気づけてよかった」「なんとか間に合ってよかった」と強く思いました。また、「みさきアニマルすまいる」のみなさんが色んなことを犠牲にしながら真剣に取り組んでいる姿や、何の罪もない動物がつらい目に遭っている現実を目の当たりにしたのも、私にとって本当に大きな経験でした。

50匹はみんないい子で、噛むような子は1匹もいませんでした。それはやっぱり、飼っていたおばあさんが愛情をかけていたからなんですよね。それなのにこんな状況になってしまったことが、とてもつらかったです。

うちでも1匹、最初から飼われていたであろうおじいちゃん犬を預かりました。仕事も忙しい時期ではなかったし、ちょうど娘二人が留学と進学で家を出て、部屋が空いていたんです。久しぶりにお日様の光を浴びて気持ちよさそうにしている姿に、胸を締め付けられました。譲渡は難しいかなと思ったのですが、その子もほかの子たちもみんな心優しい方に引き取られ、幸せな第二の人生を送っています。

――動物と向き合うときに、石田さんが大切にしていることはなんでしょうか。

動物にも尊厳はありますから、その子がしてほしくないことを動物の気持ちになって考えることを大切にしています。動物は可愛いぬいぐるみではなくて、命です。私たち一人ひとりの意識が、社会全体で変わっていくといいですよね。命の尊さに、優劣も上下も絶対にないですから。

こちらも多頭飼育崩壊の現場でのボランティアの様子。(石田さんのInstagramより。事務所提供)

空いた時間を誰かのために使うことで得られる、この上ない幸せ

――石田さんは、InstagramやYouTubeでボランティア団体の情報を発信しています。発信を続ける理由を教えてください。

私はみなさんに「石田ひかり」という名前を覚えていただき、大きくしていただいたおかげで35年以上この仕事を続けてこられました。自分に多少なりとも影響力があるのなら、世の中が良い方向に向かっていくような行動をとることで、社会に恩返しができたらと思っています。

本当にたくさんの方に発信を見ていただけて嬉しかったのはもちろんですが、共感してもらえたり、心の優しい方ってたくさんいるんだというのが希望になったし、原動力にもなりました。

もちろん、動物好きな人ばかりではないので、すべてが好意的に受け入れられるとは思っていません。でも、発信したことで譲渡会に多くの方が来てくださり、「迎えることはできないけど情報を拡散します」「寄付します」といった声もたくさん寄せられました。

聖歌「私をお使いください」は、娘の学校の合唱で聞いて以来ずっと大好きな歌で、私の支えになっています。空いた時間を人のために使えることに、幸せを感じます。「私の体のすべてをどうぞお使いください」という歌詞のように、自分も困っている方の力になれたら、という気持ちで日々を過ごしています。

――お子さんと一緒にボランティアに参加することもありますか?

保護犬の譲渡会や、フードバンクの仕分け作業のお手伝いに連れて行きました。仕分け作業では賞味期限ごとに食品を分けるのですが、後日娘が「普段の生活の中でも賞味期限を見るとフードバンクを思い出す」と話しているのを聞いたときは、興味を持ってくれているのが感じられて嬉しかったです。

スーパーでまとめ買いをしてフードバンクに送る私の姿も、娘たちには見慣れた風景。それが今後、彼女たちの中でどんなふうに芽を出すのかはわかりませんけれども、身近にボランティアをする人間がいる環境は、悪くないんじゃないかなと思っています。

――ボランティアに興味があっても、最初の一歩が踏み出せない方に向けてメッセージをお願いします。

一歩踏み出せない気持ち、よくわかります。私は今、赤ちゃんの抱っこボランティアに興味があるのですが、良さそうだなと思っている団体と連絡を取る手段がFacebookしかなくて、Facebookをやっていない私はそこで足踏み状態が続いていて、もどかしい思いです。

情報にアクセスしやすい時代とはいえ、具体的にどの団体にどうやって連絡を取ればいいのか、一歩を踏み出す難しさはそういうところにもありますよね。そんなときは、信頼できる人の情報をたどってみるのも一つの手。例えば「みさきアニマルすまいる」さんは、友人のInstagramで活動を知りました。

「フードバンク山梨」さんは、一本の新聞記事がきっかけです。記事を読んだ一週間後に、たまたまドラマのロケで訪れたスーパーが「フードバンク山梨」さんと関わりのあるスーパーだったんです。その場で食材を買って寄付をしたことが団体さんに伝わり、今のお付き合いにつながっています。

どんな活動に参加するか迷うようなら、自分の実体験を生かせるものもいいかもしれません。主婦の方なら子どもの好きなものがわかりますから、フードバンクでクリスマスや夏休みにどんなものが必要かきっと想像できると思います。

思いを持ってアクションを起こすと絶対につながっていくし、そのハードルって実はすごく低いもの。一度経験すると、ボランティア仲間の横のつながりがどんどん広がっていくので、ぜひ一歩を踏み出していただきたいですね。