スペシャルインタビュー
15歳未満の子どもが罹患するがんの総称である、小児がん。芸人や音楽プロデューサーとして幅広く活躍する古坂大魔王さんは、2020年から小児がんの子どもたちとその家族を支える活動を続けています。「エンタメのパワーをつかって小児がんの子どもたちを笑顔にしたい」と話す古坂さんに、支援をはじめたきっかけから現在の活動、子どもたちへの思いなどについて聞きました。
がんで苦しむ子どもたちに、笑いと歌で栄養を届けたい

――古坂さんが小児がん患者の子どもたちの支援をはじめたきっかけについて、教えてください。
所属事務所の社員のお子さんが小児がんだったんです。12年前くらいかな。会ったときに髪の毛がなかったから、「どうしたんですか?」と聞いたら、「実は小児がんで……」と。その子はサバイブして今は元気なんですが、小児がんという病気を初めて身近に知った出来事でした。
その後、自分がプロデュースするピコ太郎が「PPAP」でデビューした頃に、難病の子どもたちを支える団体から「ピコ太郎の大ファンの小児がんの女の子がいます。会ってもらえませんか?」と連絡がきたんです。そこで出会ったのが、当時3歳のあいりちゃんでした。
あいりちゃんは、カツラをかぶってサングラスをかけたピコ太郎のコスプレ姿で待ち構えていて。「PPAP」が好きなのかなと思いきや、一番好きなのは「ロミータ・ハシミコフ」というマニアックな曲。ピコ太郎の曲を全部歌えて、踊れる子でした。出会った2018年の4月からコメントや動画を送る形で交流を続けていたんですが、その年の9月に亡くなってしまいました。
訃報を知ったときピコ太郎はスペインでライブをしていました。そのときに現地のサイン会に一番最初に来てくれた女の子の名前もAIRIちゃんだったんです。これはもう、何かやらないといけない。そう思っていたら、冒頭で話した社員さんが小児がんの子どもたちとその家族を支援する団体「Empower Children(エンパワー・チルドレン)」を立ち上げたので、僕も参加することにしました。

小児がんの子どもと同じ目線で話すピコ太郎(LIVE EMPOWER CHILDREN プロジェクト提供)
――「Empower Children」は、小児がん患者とその家族への金銭的支援と社会的支援を目的に、啓発番組の配信やクラウドファンディングなど幅広い活動をしていますね。活動を通じて、どのようなことを感じましたか?
「小児」がんなので、当たり前ですけど患者はみんな子どもなんですよね。それがやっぱりつらい。この世の中で一番きついのは、子どもが苦しむこと。うちには今、7歳と5歳の娘がいるんですが、子どもが生まれてからはその思いがより強くなりました。
日本では毎年、約2500人が新たに小児がんと診断されます。そのうち8割は治って家に帰れるけど、2割は帰れない。その子たちに自分は何ができるのかと考えると、やっぱり笑わせることなんですよね。笑いとか音楽のようなエンタメは生活に必須なものではないけれど、必ず栄養になる。治療が何年も続く中で、そういう時間を身近に感じさせてあげたいと思っています。
ピコ太郎を一目見ただけで子どもたちは笑ってくれるから、ピコ太郎には、なるべくたくさんの子どもたちのそばに行って、歌って、一緒に遊んでほしい。支援のお金を集める客寄せパンダだとしても、ピコ太郎でできることはしていきたいです。

ピコ太郎のまわりには笑顔が広がる(LIVE EMPOWER CHILDREN プロジェクト提供)
活動をはじめて7年、広がりを見せる支援
――「Empower Children」は、2020年から複数のアーティストが参加するチャリティーライブ「LIVE EMPOWER CHILDREN」を行ってきましたが、2025年からは「LIVE TOUR IN HOSPITAL」として、全国の小児がん拠点病院を巡って出張ライブを行う形に進化しました。
企画当初から、病院でライブをしたいと思っていたんです。でもコロナがあって、なかなか実現できなかった。今年1月に名古屋大学医学部附属病院へDJ KOOさん(TRF)、伊藤千晃さん(元AAA)と一緒にピコ太郎が出張ライブに行ったんですが、やっぱり直接会えるのはいいですね。
ピコ太郎は「Many Many Money」を歌って、子どもたちは大きな声で「お金ちょーだい!」と叫ぶ。DJ KOOさんは爆音を鳴らしまくる。普段なら病院でそんなことをしたら絶対に怒られるのに、その日だけは、鼻に酸素チューブをつけた子も、親も、看護師さんも院長先生もみんな笑っているんです。
入院している子どもたちにとっては、病院で治療を受けるのが日常。お花見にも、学校にも、遊園地にも行けない。そこにサーカスみたいな非日常がやってくるんだから、そりゃ盛り上がりますよね。ライブの後に病室を回ると、ピコ太郎を見るなり子どもたちが「お金ちょーだい!」って言ってきて、本当にすごくいいなと思いました。
子どもたちに、大人が本気で笑っている姿を見せられたことも、このライブをやってよかったと感じた理由です。みんなが笑えるのが、エンタメのパワー。大人がはしゃぐと、子どもたちも本当にうれしそうに笑うんですよ。

「LIVE EMPOWER CHILDREN 2026 LIVE TOUR IN HOSPITAL」
にてDJ KOOさん、伊藤千晃さんと(LIVE EMPOWER CHILDREN プロジェクト提供)
――2月15日の国際小児がんデーに合わせて、ピコ太郎は新曲「人生、盛っちゃって!」を発表しました。この曲は小児がんの子どもたちやその家族から寄せられた、「うた」「声」「笑い声」「言葉」を元に曲を作る「ラフ・ソング」プロジェクトから生まれたそうですね。
子どもたちの声で曲を作りたかったんです。それがピコ太郎にハマったらこんな楽しいことはないなって思いました。歌詞に出てくる「人生は、楽しむためにある!」は、脳腫瘍で亡くなったこうちゃんという男の子の、小学3年生のときの言葉です。その様子を動画で見たときは、衝撃でした。明るく、言い切るんですよ。
子どもたちの言葉はどれも軽やかで前向きなのに、大人はどうしても重く受け止めてしまうから、振り付けや映像も含めて、かなり悩みました。だけど、改めてすべての言葉を見返して確信したんです。「子どもたちは楽しいことがしたいんだ」って。そうして完成したのが、「人生、盛っちゃって!」でした。
親御さんからは「子どもの声が広まってうれしい」という声をたくさんもらいました。患者さん家族と付き合いを続けていると、中には子どもを亡くしてしまう方も出てくる。そうなると、その話題に触れたら悪い気がするじゃないですか。でも、出会ったみなさんは真逆でした。親は子どもの話をしたいし、子どものことをみんなに覚えていてほしい。歌詞にある「おかえりなさい」「いってらっしゃい」は、親側の言葉として印象に残っていたものです。
小児がんは2割は治らない可能性があるけど、逆に言えば、8割は治る。だから僕は、「いってらっしゃい」に「8割は治るんだ! いってこい!!」って気持ちも込めました。

「人生、盛っちゃって!」の制作中の古坂大魔王さん(LIVE EMPOWER CHILDREN プロジェクト提供)
支援の輪をより広げるために
――私たちが小児がんの子どもたちを支援したいと思ったとき、まず何からはじめるといいでしょうか。
やっぱり、知ることからですね。小児がんになる子は年間2500人くらいなので、直接会う機会はほとんどないと思うんです。知らなければ関わりようがないから、ピコ太郎は広報活動をがんばっています。
もし小児がんの子に接する機会があったら、変に気を遣ったりせずに、そのへんの子と同じように会話するといいと思います。以前、あいりちゃんのお母さんから「来週手術だから励ましてほしい」と言われて、「来週から、体の中の悪い奴を……」と話しかけたら、あいりちゃんはすぐ顔を背けたんです。抗がん剤治療は、それくらいつらい。
ベストな声かけなんてものはなくて、笑い合うのが一番です。子どもたちは、かわいそうだと思われることに飽きている。だから自分は、できるなら「たかいたかい」がしたいし、「いないいないばぁ」をしたいし、「だるまさんがころんだ」をしたい。知る、接する、笑う。それが大事だと思います。

――7年間支援活動を続けてこられた、その原動力は。
ええかっこしいの、自己満足です。でも夜寝る前に、「あの子たち笑ってたな」って思い返したときに感じる満足感に勝る幸せはない。人生は楽しむためにあるんですから、自分もみんなも笑えるなんて最高じゃないですか。
それに、ある程度有名になった人は、社会に何か返さないといけないと思うんです。仕事をもらえたのは、みんなが有名にしてくれたから。ピコ太郎がラッキーで手に入れた知名度は、小児がんを知ってもらうために使いたいので、支援はライフワークとして続けていきたいですね。
――ピコ太郎は「SDGs推進大使」など、さまざまな社会貢献活動をしています。
ピコ太郎が「SDGs推進大使」に就任した2017年頃は、まだSDGsという言葉自体ほとんど知られていませんでした。でも今は、ポイ捨てはダサい、リサイクル素材の服の方がかっこいいという感覚が広がっている。啓蒙って、意味があるんだなと感じています。
世の中が良い方向に変わっていく様子を見ながら、歳を重ねていきたいですよね。だって、その方が楽しいじゃないですか。

――最後に、ボランティアに関心のある方へメッセージをお願いします。
ボランティアを続けている人って、すごくかっこいい。戦争に巻き込まれている人に関心を向けたり、障害のある人のためにできることを考えたりするのは想像力がないとできないことだから、とても尊敬しています。
でも、一人で100%はやらなくてもいいのかなとも感じていて、家庭や仕事とのバランスも大切にしながら、4%を25回に分けるとか、4%を25人でやって100%にすると、長くボランティアを続けられる気がします。募金だって、無理なくできる100円とかでいいと思うし。
とにかく、みなさんはかっこいい! 僕は、ボランティアをSDGsと同じように、かっこいいイメージに変えていきたいと思っています。