活動のヒント

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地域の自然を守り、ささえるボランティア【生態工房の活動】

掲載日:2026.04.08

東京ドーム約13個分の広さを誇る都立光が丘公園。公園内には豊かな自然が広がり、バードウォッチングを楽しめる施設なども整備されています。この公園で、ススキなどが生える「草はら」の保全活動をしているのが認定NPO法人「生態工房」です。2時間ほどの保全活動に密着し、活動の内容や魅力について聞きました。

多様な生態系を守るために欠かせないのは「人の手」

東京都の練馬区と板橋区にまたがる光が丘公園。その一画にある「すすき原っぱ」は、貴重な野生生物の保全区域です。練馬区内ではもっとも広い草地で、ススキやオギをはじめとした100種以上の在来植物や、モズ、ホオジロといった鳥類、クビキリギスやショウリョウバッタモドキなどの昆虫たちが生息しています。

こうした草地は放っておくとやがて木が生え、いずれは森へと変わってしまいます。その結果、草地特有の環境を好む動植物は住み処を失ってしまうことから、生態工房が毎月第4土曜日に「草はらの日」を開催し、ボランティアと共に保全活動を行っています。

「草はらの日」は月に一回開催

冬の陽光が暖かいこの日の活動は、落ち葉かき。草地一面を覆う枯れ葉を熊手でかき集め、公園内にある堆肥場へと運びます。「草はらの日」は年間を通じてさまざまな活動があり、落ち葉かきの他にもササ刈りや柵の補修、外来草本の抜き取りなど多岐にわたります。

作業を始める前に、まずは生態工房の職員から、落ち葉かきの役割と必要性の説明があります。一見すると、「落ち葉には栄養があるため、植物たちがよく育つのでは?」と思われがちですが、実はススキなどの在来種は、栄養が少ない環境のほうが生育に適しています。また、落ち葉を取り除くことで地面に日の光が届くため、来春の芽生えを促す効果もあるそうです。

昔は日本の約10%が草地だったそうですが、今は1%ほどまで減っているそうです。「草はらの日」では、人が自然に手を加えることで、貴重な草地を保全する役割があります。

活動前に道具の使い方など丁寧な説明があるので、初めてでも安心

続いて、使用する道具の説明と使い方のレクチャーがあります。この日使うのは、熊手や手箕(てみ)。熊手は力を入れずに使うことがポイントのようです。

この日、ボランティアとして参加したのは約20名。小学5年生から60代までと年齢層は幅広く、ひとりで、友人と、親子でと、参加スタイルもさまざまです。

それぞれ熊手を手に取り、活動がスタートです。使い慣れない道具に最初のうちは動きがぎこちなかった人も、時間が経つにつれて作業はスムーズに。自然と落ち葉をかく人と集める人の役割分担が生まれ、初対面でも協力して作業しているのが印象的です。2時間ほどの作業で、落ち葉で覆われていた地面は次第に明るさを取り戻しました。

楽しげに落ち葉を集めていたのは、幼なじみの中学生2人組。作業を終えて「今回が初めてのボランティア活動ですが、また参加したいです」と笑顔で話してくれました。

同じくボランティア初体験という女性は、「今年はいい人間になろう」という目標を達成するために参加。「まずは対自然のボランティアを」という理由で選んだそうですが、「無心で身体を動かすのは気持ちがいいですね」と満足している様子でした。

協力し合って草はらをキレイにしていきます

また、埼玉県から継続的に親子で参加している男性は「息子が就職活動で、“学生時代に力を入れたこと”と言えるものをつくりたかったのがきっかけ」とのこと。すでに社会人となった息子さんは、「やるべきことを自分で気づけて、主体的に動けるのが『草はらの日』のいいところ。この作業は楽しいですし、習慣化しています」と教えてくれました。

自然や人とのコミュニケーションを楽しみながら活動

今回の最年少は小学5年生の髙倉さん。道徳の授業でボランティアに興味をもち、お母さんと一緒に参加しました。もともと自然が好きで、自ら「草はらの日」の活動があることを見つけ、参加を決めたそうです。

親子で参加した髙倉さん

活動中の笑顔が印象的な髙倉さん親子。「やってみて楽しかったし、自分たちの手で自然を守っていくことを実感できました。親子や友だち同士など、仲のいい人と協力しながら参加するといいと思います」と話してくれました。

親子で楽しそうに落ち葉かき

2024年4月から参加している長谷部さんは、悪天候でない限りは、「草はらの日」に優先的に参加しているそうです。登山が趣味で自然が好きな長谷部さん。土いじりや鳥の鳴き声で気持ちが解放されるといいます。

「これまで、人が手を入れない状態こそが自然だと思っていました。この活動で、自然を守るためには、人の手を入れることが大切だと初めて知りました。光が丘公園は大木も多く、自然にあふれています。自分は練馬で育ったのでこれが当たり前と思っていましたが、そうではないと気づきました」と教えてくれました。

参加者同士で協力しあう作業もあり、コミュニケーションも生まれます

事前予約不要なので参加のハードルがグンと低く

今回の「草はらの日」で、ボランティアの方々と共に作業を行っていたのが、生態工房の芦田星(しょう)さんです。1998年に大学院生を中心に設立されたという生態工房は、生物多様性の保全と持続可能な社会の実現を基本理念として活動しています。

生態工房の芦田さん

生態工房の活動範囲は東京西部や埼玉のエリアが中心で、設立当初から光が丘公園でも活動しています。本日活動した草はらに隣接するバードサンクチュアリは、望遠鏡が備えられた野鳥観察施設。水辺から草地まで多様な自然が広がっています。

生態工房では「草はらの日」の他にも、水質改善や外来生物防除を目的とした「かいぼり」や、公園内の湿地管理など、さまざまな活動でボランティアを募集しています。中でも「草はらの日」は、毎月第4土曜日の定期開催で参加しやすく、天候にもよりますが、毎月平均25名ほどが参加しているそうです。

活動前に光が丘公園の自然について説明をする芦田さん

「『草はらの日』は事前予約が不要なため、当日気軽にご参加いただけます。もし10名を超える団体様などの場合は事前にご連絡いただけると助かります。学生の団体や企業の研修といった場合は、活動のコーディネートもできますので、イベントの日に限らずご相談いただければと思います」

さらに「草はらの日」は年間を通して参加することがおすすめだと言います。「季節ごとに原っぱの様子を見ることで、その時々の変化が実感できます。春のみずみずしい芽生えや、秋、ススキの穂が風に揺れる様子など、季節季節の原っぱを感じていただければと思います」

活動に2回参加した方にはメモページやすすき原っぱの概要が載った「組合員手帖」を配布

生物多様性保全はとても重要なこと。でも、それだけではなく、保全活動に参加することで身近な地域の良さを再発見したり、自ら地域の景観に関わったりすることは、「とても楽しい活動だと思います」と、芦田さんは語ります。

「身近な自然の中で作業すると普段の景色も違って見えるのではないかと思います。ぜひ一度、気軽に参加してみてください」