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中高生が挑戦!農家のボランティアと高齢者施設のボランティア

掲載日:2025.11.27

ボランティアをしてみたいけれど、どのボランティアに申し込んだらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、学校や仕事が忙しいという方にもおすすめの、農家を手伝う「援農ボランティア」と夏休み期間のボランティアプログラムの一つ、「高齢者施設のボランティア」の様子を紹介します。

ブルーベリーの摘み取りに、枝豆の袋詰め 農作業を体験

枝豆の仕分けをする章翔さん

夏の日差しがまぶしい、土曜日の朝8時過ぎ。東京・東久留米市にある農園「奈良山園」には、農作業を手伝う「援農ボランティア」が集まっていました。高校2年生の章翔(あきと)さんも、その一人。ボランティアは初めてということで、最初は少し緊張した様子でした。

まずは、初心者でも作業しやすい枝豆の袋詰めをすることに。今朝収穫したばかりという枝豆。実が入っていないものや、変形・変色しているものを取り除きながら、250グラムずつビニール袋に入れていきます。

黙々と作業すること2時間弱。始めこそ「色の違いがわからないです」と、スタッフに質問していましたが、終了する頃には慣れた手つきに。かごいっぱいに袋が並んでいました。

仕分けられた枝豆

一息ついたら、次はブルーベリー畑へ。この日は37度超の予報が出ていたものの、農園は緑豊かだからか、温度計ほどの暑さは感じません。それよりも、この時期の敵は蚊。農園側が用意してくれた虫除けスプレーをかけたり、蚊取り線香を腰からぶら下げたりと、準備を整えてブルーベリーの摘み取りに臨みます。

低木を想像していたというブルーベリーの木は、章翔さんの身長を超えるほどの高さ。目線より上の高さから、腰より下のあたりにまでたくさんのブルーベリーがなっていました。こういうことも、実際に作業しないとわからないことの一つです。

最初に収穫する実のサイズや収穫のコツなどのレクチャーを受けて、いざ収穫です。伸びた枝の下に潜り込み、熟した実を探していきます。よく熟した実は、触れただけでカゴの中へポロポロと落ちていきました。

腰をかがめ、ブルーベリーを摘み取る

行く手を遮るように伸びた枝の下に潜り込み、木漏れ日の中で青い実を探して1時間ほど経ったところで、摘み取り作業は終了です。慣れた人は一時間で10キロ収穫すると事前に聞いていた章翔さんは、「全然採れなかったです…」と、ちょっと残念そう。それでも、カゴの底が見えないくらいの量は収穫できていました。

11時半過ぎ。キウイフルーツ畑の木陰で、農園自家製の冷たくておいしい梅のシロップ煮を食べながら休憩時間を過ごします。ボランティア同士で会話をしたり、農園スタッフに農業についての話を聞いたりと、和やかな時間が流れていました。

奈良山園自家製の梅のシロップ煮

最後に30分ほど、先ほど採ったブルーベリーの中から、大きく熟した実を100グラムずつ量ってパッキングしていきます。まだ小さな実はジャムなどの加工用に分け、色や形が悪い実はニワトリのえさ用に分けます。これで今回の活動は終了です。

章翔さんに、初めてのボランティアの感想を聞きました。「驚いたのは、収穫もパッキングも手作業だということ。収穫した野菜は工場で機械を使って袋詰めするイメージがあったけど、そうじゃなかった。農家の人の大変さを知りました。でも一方で、その大変さが自分にとっては楽しさでもあったので、友達にも援農ボランティアを勧めたいと思いました」

注意深くブルーベリーの選別をする章翔さん

枝豆とブルーベリーの選別作業をしたことで、規格外野菜への関心も高まったと話します。「普段食べているものが、ここまで選別されているなんて知りませんでした。少し見た目が悪いだけで食べないのはもったいない。これからはそうした野菜が売られているサイトにも目を向けてみようと思います」と教えてくれました。

お年寄りと和やかに交流 喜ぶ笑顔にやりがい

利用者と話す阿部さん

9月のとある日。東京・豊島区の特別養護老人ホーム「アトリエ村」では、デイサービスの利用者がおやつの時間を楽しんでいました。その様子を静かに見守っていたのが、中学2年生の阿部さんです。半年ほど前から週に一度、2時間のボランティアを続けています。

チラシを折ってごみ箱を作ります

人と話すことが少し苦手だという阿部さん。最初の頃は利用者との会話に緊張したものの、今では困っている人がいたら自分から話しかけられるようになりました。「今日はレクリエーションの時間に折り紙で鳥のシマエナガを折りました。ちょっと手間取っている方には、声をかけて一緒に折りました」。毎週通ううちに顔見知りが増え、ますます活動が楽しくなったと言います。

利用者に声をかけ、片付けを進める阿部さん

おやつとお茶の時間が終わると、阿部さんが片付けを始めます。「下げてもいいですか?」。お茶が残っている人にはそう声をかけ、決して急かしません。テレビを見ている人の前を通るときは、視界を遮らないように気をつけながら作業を進めていきます。テーブルの上のゴミを回収していると、おばあさんから「お兄さん、ありがとうね」と声をかけられ、ぺこりと会釈。少し雑談をして、次のテーブルへ移っていきました。

モップかけもテキパキと行います

利用者が帰宅の途につくと、にぎわっていたフロアは少しずつ静かになっていきます。床のモップがけが終わると、施設の職員から「ありがとう。それが終わったら、こっちもいい?」とお願いされて、色鉛筆の整頓作業に取り掛かりました。日によって頼まれる内容は変わるそうで、この日は色鉛筆の足りない色を補充したり、先が丸い色鉛筆を削ったりしているうちに、終了時刻を迎えました。

ボランティアのやりがいについて話してくれる阿部さん

阿部さんにボランティアを続けている理由を聞くと、「お年寄りが好きなんです。みんな、優しいから」と明るい声で答えてくれました。「やわらかい口調で話しかけてくれるし、たまにする雑談も楽しい。同年代の人にも高齢者施設でのボランティアを体験してみてほしいです。なにか一つ、続けられることをやりたいと思って始めたボランティアでしたが、今は将来の職業として介護や福祉系もいいかもしれないと考えています。わからないことを職員さんに質問する勇気を出せるようになったのも、自分にとっては大きな成長でした」

「自宅近く」や「半日だけ」など、自分の希望に合うボランティアが見つかる

奈良山園のボランティアに申し込んだ章翔さんですが、どのようにしてこのボランティアを知ったのでしょうか。実は、援農ボランティアの募集情報が集まったポータルサイト「とうきょう援農ボランティア」(運営者:公益財団法人 東京都農林水産振興財団)を利用して検索し、申込もそのサイト上で行いました。

高校生以上の年齢の方が対象で、東京都内の農家の募集情報の中から、近所の農家を探したり、カレンダーから都合の良い日の活動を探したりすることができます。作業内容も種まきや収穫、出荷準備のお手伝いなどさまざま。作物や田畑の写真なども掲載されているので、イメージしやすいのもうれしいポイント。

章翔さんと同じ日に参加した女性は、「自宅から1時間以内」という条件で探して、毎回違う農園のお手伝いをしていると話していました。

コミュニケーションを取りながら作業を進めるボランティアや農園スタッフたち

今回ご紹介した奈良山園では、2019年から「とうきょう援農ボランティア」を通して一年中ボランティアを受け入れています。代表の野崎林太郎さんによると、最近は高校生や大学生の参加申し込みも増えているのだそう。

奈良山園代表の野崎さん

「年間のべ250名前後がボランティアとして来てくれていて、だいたい1~2割が学生さんです。農業や食に関心があって来てくれる方もいれば、友達と参加して、『農業には興味なかったけど、やってみたらおもしろかった!』と話してくれる方もいます。収穫の喜びを知るとともに、普段皆さんが食べているものにどれだけの手間と人手がかかっているかも知ってもらえたらうれしいですね」

奈良山園では年間70品目もの野菜や果物を育てているそうです。「○○農家」とメインの品目が決まっている農家も多い中で、季節ごとに違う作物の収穫ができるのは奈良山園ならではの魅力。

「うちは有機栽培で手作業の部分が多いから、手伝ってもらえると助かります。ボランティアさんが来るようになって農園はとてもにぎやかになりました。ボランティアさんとコミュニケーションをとる中で、スタッフにも農業への想いを発信できるようになってほしいなと思っています。『フードロス』が注目されがちですが、そもそも出荷の段階でこんなに廃棄しているというのは、実際に作業してみないとわからないことかなと思います。農作業が初めてという方でも大丈夫ですので、ちょっとでも関心があったらぜひ参加してみてください」

アトリエ村のボランティアコーディネーターの布施川さん

アトリエ村のボランティアは、東京ボランティア・市民活動センターが毎年7~9月に開催している「夏の体験ボランティア」のプログラムの一つ。アトリエ村は通年でもボランティアを受け入れていて、その数、年間のべ約1000人にもなるそうです。

阿部さんが参加している対面のボランティアのほかにも、暑中見舞いや残暑見舞いのはがきを作るリモート・ボランティア、ピアノや歌など特技を披露するボランティアがあり、興味のある活動を選ぶことができます。

20年以上ボランティアを受け入れてきた「アトリエ村」の特徴は、何でも相談できる専任のボランティアコーディネーターがいること。ボランティアコーディネーターの布施川香保利さんが、活動前のオリエンテーションを丁寧に行い、どんな活動がしたいか、不安なことはないかなどの聞き取りをして、参加者一人ひとりに合った個別のプログラムを作ってくれます。

人とのつながりが自分の財産だという布施川さん。「決まった活動日や時間はありません。みなさんの都合や要望に合わせて、活動日時を決めていきます。親子での参加も大丈夫です。なんでも相談してください」と笑顔で話してくれました。

利用者の活動の様子を見守る阿部さん

「若い方はただ来てくれるだけでとても喜ばれます。だって、孫と同じくらいの年頃ですからね。中高生の皆さんにも、高齢者の方々はこんなに優しいんだということを知ってほしいです。もしよかったら、高齢者と少しお話をするところから始めてみませんか?高齢者の方と接したことがなくても大丈夫です。楽しく活動できるように、私も他の職員もしっかりサポートしますよ」

今回ご紹介した奈良山園の援農ボランティアとアトリエ村のボランティア。取材した2人が活動の中から気づきを得て、それぞれ充実していた姿が印象的でした。

「とうきょう援農ボランティア」や「夏の体験ボランティア」のホームページには、ほかにもたくさんの活動が掲載されています。学生だけでなく大人も参加することができますので、ぜひ、ホームページをのぞいて、気になる活動を見つけてみてください。