ボランティア関連ニュース(外部記事)

  • 医療・福祉・人権
  • 災害救援・地域安全活動

<社説>災害支援でけが ボランティア支えたい

2025.12.22
 がれきや流れ込んだ泥の撤去、清掃など災害時の多様な場面で、今や、不可欠な存在とも言えるのが災害ボランティアだ。これまで活動中のけがに関する公的統計はなかったが、昨年の能登半島地震を対象に、総務省中部管区行政評価局が初めて事故事例集をまとめた。今後の支援に生かしたい。

 仕事上の事故なら厚生労働省が所管し、労災保険の対象にもなるが、自主・自発的なボランティアは対象外。このため国や自治体が活動中のけがの事例をとりまとめることはなかったという。中部管区行政評価局が調査に着手したのは、能登半島地震で災害ボランティアに関する行政相談が寄せられたことがきっかけだったという。

 事例集によると、昨年元日の発生直後から、石川県内の12市町に災害ボランティアを受け入れるセンター(VC)が開所、延べ17万9550人が活動した。今回の調査で、今年7月までに計75件の事故が発生していたことが判明。その内訳は、ごみの搬出・運搬・分別中のけがが最多の25件で、家財の搬入・搬出中が15件、がれきの撤去中が12件と続く。

 内容は、靱帯(じんたい)断裂や肉離れ、刺傷、結膜炎、骨折、打撲などさまざまで、不注意が原因とみられる事故の一方で、厚手の手袋や滑りにくい靴、防じんゴーグルなど装備が不十分だったことに起因する事例もあったという。

 ボランティアは原則として交通宿泊費や食費などに加え、ヘルメットやマスク、手袋、長靴などの装備も自身で用意しなくてはならない。自らのけがに加え、被災者の物品を破損させた場合などに備え、現地入りする前には、「ボランティア活動保険」に自前で加入することも推奨されている。

 「ボランティア元年」といわれる1995年の阪神大震災以降、その存在感は増す一方だ。今回の事例集は、今後の対応に生かしてもらうため、災害時の派遣調整を担う全国社会福祉協議会や全国災害ボランティア支援団体ネットワークにも共有されるという。

 災害ボランティアのための活動保険や移動、装備品費などを補助する制度を設けている福井県のような例もある。97年のロシア船籍タンカー重油流出事故で、各地からのボランティア、義援金に助けられた経験が契機だった。篤志に少しでも報いようとする支援であり、他自治体も参考になろう。