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外国人に無料医療通訳、異国での受診に寄り添い10年 岩手県奥州市

2025.11.07
 言葉の違う国で病院にかかる心細さを支えようと、岩手県奥州市で外国人に医療通訳を派遣する取り組みが始まって10年が過ぎた。国の方針で外国人労働者が増え続ける中、医療通訳派遣は東北地方で計3地域にとどまる。外国人労働者のさらなる増加が見込まれる今後、態勢の強化が求められそうだ。
 医療通訳派遣は2015年、奥州市国際交流協会が始めた。大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」誘致に向けた環境整備の一環で、19年から市の事業となり、協会に業務委託して行っている。
 派遣先は、協会と提携する盛岡市以南の県内11医療機関。患者の要望があれば、医療機関が協会に派遣を要請する。経費は協会が負担する。
 通訳を担うボランティアは約90人で、英語、中国語、韓国語、タガログ語、ベトナム語の5言語に対応。毎年のボランティア研修や、派遣時の交通費など年300万円弱の予算を組んでいる。
 奥州市に隣接する一関市のインドネシア国籍の主婦、ギナニサ・アウリアさん(28)は8月から、毎月の妊婦検診で英語の医療通訳派遣を利用している。「日本語の日常会話はある程度できますが、医師の話は難しい。通訳派遣のおかげでとても安心です」と話す。
 ギナニサさんは昨春、工業デザイナーの夫(33)と4歳の長女の3人で、インドネシアから来日。妊娠し、最初にかかった産科医院では話が半分も分からず困ったという。
 8月から通うことになった一関市内の県立病院では通訳派遣を受けられると聞き、さっそく依頼。受診した日は、通訳ボランティアと協会職員の2人が医師や病院職員とのやりとりをサポートした。特に助かったのが、宗教的配慮を頼めたこと。イスラム教徒のギナニサさんは豚肉などが食べられない。お産入院での食事配慮を検討してくれることになったという。
 ギナニサさんは「書類手続きはオンラインの翻訳を使えば何とかなりますが、対面のやりとりは難しい。通訳の方のおかげです」と感謝する。