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<リポートいばらき>県、ボランティア作業の重要性アピール 道路美化へ一役 ヤギさん除草隊

2025.11.06
 茨城県は昨年から、県道の除草作業にヤギやヒツジなどの草食動物を活用する「ヤギさん除草隊」を出動させている。燃料費や人件費の高騰が全国的な問題となる中、費用を抑えた上にヤギの食料も賄える画期的な活動のようにみえる。しかし、導入の背景には、地域住民の高齢化といった重い課題もあるようだ。(渡部穣)

 10月27日、ヤギ6匹とヒツジ2匹の除草隊は、古河市東山田の県道脇に出動した。近くの八俣小学校6年生約50人も応援で参加。雑草を手で食べさせるなど、動物と親しみながら清掃活動に汗を流した。吉葉みのりさん(12)は「草取りは好きじゃないけど、草をおいしそうに食べてくれたから楽しくできた」と笑顔を見せた。

 「ヤギさん除草隊」が結成されたのは昨年9月。隊員のヤギたちは、石岡市の観光牧場「ダチョウ王国石岡ファーム」からレンタルし、今回で7回目の出動となる。県道路維持課によると、活動の参考にしたのは、全国に先駆けてヤギによる除草を始めた岐阜県美濃加茂市の事例だ。

◆費用削減も…

 同市から委託を受けている農業生産法人「フルージック」の渡辺祥二代表は「最も大きいメリットは費用」と強調する。市によると、除草を委託している計約3・2ヘクタールの公園緑地や道路脇ののり面の除草費用は年間約1千万円。ヤギを使えば、抜き取った草の運搬や処分の費用がかからないため、人力で作業していた時に比べて費用は3分の2以下に抑えられているという。

 もっとも、茨城県道路維持課の担当者は「除草をすべてヤギに任せることは考えていない」と断言する。美濃加茂市の面積は約75平方キロで、茨城県の80分の1。道路総延長が北海道に次いで2番目に長い茨城県で、ヤギを本格的に活用するのは現実的ではないという。

◆沿道住民頼み

 その代わりに見据えているのは将来の維持管理だ。現在、主要な県道の除草作業は県内12カ所の土木事務所が業者に委託しているが、歩道の除草などは沿道住民らのボランティアに頼っている。しかし、ボランティアに参加する人は高齢者が多く、今後の減少は避けられない。少しでもボランティア作業への関心を持ってもらおうと注目したのがヤギだった。

 茨城県の狙いに、美濃加茂市の渡辺代表は「『地域の人の協力が必要』という危機感を県民に持ってもらうためのPRは、とても重要」とエールを送る。

 渡辺代表は、ヤギさん除草隊の予想外の効果も明かす。美濃加茂市では除草隊が出動するようになってから、道端に捨てられるごみの量が大きく減ったという。渡辺さんは「人の代わりに草を食べて環境美化に努めてくれるヤギたちの姿を見て、身近な環境を大切にする気持ちが根付いてきたのではないか」と、住民意識の変化も感じている。

 茨城県では昨年の導入以来、一緒に除草した子どもたちからは「楽しかった」など好意的な感想が寄せられており、住民の反応も良いという。県土木部境工事事務所の兼澤公也所長は「少しでも多くの人に道路の美化に関心を持ってもらいたい」と、除草隊の活動に期待している。