体験談
東京マラソンの受付ボランティアとして参加した一日は、想像以上に濃く、そして心に残る体験になった。オープニングの時間帯は、まさに“波”という表現がぴったりなほど大勢のランナーが一気に押し寄せ、会場全体が熱気と高揚感に包まれていた。受付ブースに立っていると、次々とランナーがやってきて、こちらができるのは 挨拶と簡単な会話、そしてスムーズに案内すること。それでも、ただ流れ作業にならないように、できる限り自分から声をかけるように心がけた。
「こんにちは!」「初マラソンですか?」「頑張ってくださいね!」
そんな短い言葉でも、ランナーの表情がふっと和らぐ瞬間がある。緊張している人、ワクワクしている人、疲れた顔の人、いろんな表情があって、こちらも自然と気持ちが引き締まった。
特に印象に残ったのは、海外から参加したランナーとのやり取りだった。英語が得意というわけではないが、身振り手振りを交えながら積極的に話しかけると、相手も安心したように笑顔を返してくれる。あるランナーは、受付後に「次はどこへ行けばいいのか分からない」と不安そうにしていた。会場は広く、案内表示も多いが、初めての国で初めての大会となれば迷うのも当然だ。
そのランナーに対して、できるだけ丁寧に、ゆっくりとした英語で説明し、必要な場所まで一緒に歩いて案内した。途中で少し雑談も交え、「日本に来るのは初めて?」「どこの国から来たの?」と聞くと、相手も嬉しそうに話してくれた。短い時間だったが、言葉の壁を越えて“人としての交流”ができたように感じた。
案内を終えたとき、そのランナーは笑顔で「Thank you so much!」と言ってくれた。こちらとしては気持ちよく対応できたと思っているが、心のどこかで「本当に満足してくれたのだろうか」「もっと良い案内ができたのではないか」と気になってしまう。ボランティアとしての役割は果たしたつもりでも、相手の本当の気持ちは分からない。だが、あの笑顔と握手の力強さを思い返すと、少なくとも不安を少しでも軽くする手助けにはなったのではないかと思える。
東京マラソンの受付ボランティアは、単なる作業ではなく、世界中から集まるランナーと触れ合える貴重な機会だった。短い会話でも、挨拶だけでも、人の気持ちは変わる。自分の小さな一言が、誰かの大会の思い出の一部になっているかもしれない。そう思うと、胸が温かくなる。
来年も必ず応募しようと思いました