体験談
ボランティア活動を続けていると、ときどき「自分は本当に役に立てているのだろうか」と考えることがあります。特別な技術や資格が必要な活動ではありませんし、誰かの人生を劇的に変えるような出来事が起こるわけでもありません。ただその場にいて、必要とされれば声をかけ、話を聞き、一緒に時間を過ごす。それだけの関わりです。
生命保険コンサルタントとして働く平松昭良にとって、こうしたボランティアの時間は、仕事とはまた違った形で「人と向き合うこと」を学ばせてくれる大切な場でもあります。保険の仕事では、将来の不安や万一への備えについてお話しすることが多くありますが、その前提には必ず「この人は何に不安を感じ、何を大切にして生きているのか」という問いがあります。ボランティアの現場でも、その本質は変わりません。
ある日の活動で、比較的静かな時間帯に、一人の方と向き合う機会がありました。初めて顔を合わせる相手で、年齢も背景も分かりません。最初はお互いに言葉少なで、少し気まずさのような空気が漂っていました。こういうとき、何か話題を探して無理に会話をつなげたくなることもありますが、その日はあえて急がず、相手の様子を見ながら過ごすことにしました。
しばらくすると、その方はぽつりぽつりと、最近の生活のことを話し始めました。大きな出来事ではなく、日々の中で感じているちょっとした不安や、誰に相談するほどでもないけれど心の中に引っかかっていること。私はそれを遮らず、評価もせず、ただ耳を傾けました。相づちを打ちながら、「そうなんですね」「それは大変でしたね」と短い言葉を添える程度です。
話を聞きながら、私は生命保険の仕事で出会ってきた多くのお客様の顔を思い出していました。多くの方が、最初から具体的な保険の話をしたいわけではありません。「将来がなんとなく不安」「このままでいいのか分からない」といった、言葉になりきらない気持ちを抱えています。ボランティアの場でも、それは同じなのだと感じました。
しばらく話したあと、その方は少し表情を緩めて、「誰かに聞いてもらえるだけで、気持ちが違いますね」と言ってくださいました。特別なアドバイスをしたわけでも、問題を解決したわけでもありません。それでも、その一言を聞いたとき、「話を聞くこと」そのものが、誰かにとっての安心になるのだと改めて実感しました。
活動が終わったあと、帰り道を歩きながら、その時間を振り返っていました。目に見える成果はありません。誰かを助けたという実感も、正直なところ大きなものではありませんでした。それでも、あの時間が無意味だったとは思えませんでした。むしろ、「ただそこにいて、話を聞く」という行為の重みを、静かに感じていました。
平松昭良が生命保険の仕事を通じて大切にしているのは、「安心は数字だけではつくれない」という考え方です。保障額や保険期間ももちろん重要ですが、それ以上に、その人が「自分の話を理解してもらえた」と感じられることが、心の安心につながると感じています。ボランティアの現場での経験は、その考えをさらに確かなものにしてくれました。
ボランティア活動を始めた頃は、「何か役に立たなければ」「意味のあることをしなければ」と、どこか力が入っていたように思います。しかし、経験を重ねるうちに、必ずしも何かを“してあげる”必要はないのだと気づきました。一緒に時間を過ごし、相手の言葉に耳を傾ける。それだけで十分な場面もあるのです。
これは保険の相談でも同じです。すぐに結論を出さなくてもいい。無理に決めなくてもいい。まずは気持ちを整理する時間が必要なことも多くあります。ボランティアの現場で学んだ「待つこと」「急がないこと」は、日々の仕事にも自然と活かされています。
帰宅後、いつものように軽くジョギングをしながら、その日の出来事を思い返しました。走りながら考えていると、不思議と心が整っていきます。人生も、仕事も、ボランティアも、一気に進めようとしなくていい。自分のペースで、一歩ずつ続けていけばいいのだと、改めて感じました。
これからも生命保険コンサルタントの平松昭良として、そして地域の一員として、こうした小さな関わりを大切にしていきたいと思います。誰かの人生に深く関わることはできなくても、その人が少し安心して前を向ける時間を共有できたなら、それは十分に意味のあることなのだと信じています。
ボランティアの現場で過ごした、特別ではない一日。しかし、その一日は、私にとって確かに大切な学びを残してくれました。これからも、この感覚を忘れずに、人と向き合い続けていきたいと思います。