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学生たちが見た農業のリアル 食農教育や地産地消…思いや課題を聞く
2026.10.06
学生が農業や食の課題を知り、解決策を探る「農と食の未来を考えるプロジェクト」(主催・朝日新聞社、協力・全国農業協同組合連合会〈JA全農〉)が始まって4カ月。学生たちは現地調査に向かった。農業の現場や研究者の話を見て、聞いて感じたことは。フィールドワークの模様を報告する。
「地域農産物の価値創造」をテーマに、子ども向けのワークショップを通じて地元でとれた野菜の魅力を広めるプランを練っている班は、9月にJA横浜を訪れた。
JA横浜は、横浜市内の小学校への出張授業など、食農教育に積極的だ。組合員の農家が授業に出向く場合も多く、活動に参加する組合員を支援する「食農教育マイスター」制度をJA独自に設け、約200人が登録している。
「食農教育の狙いは?」という学生の質問に、組織生活課次長の冨田司さんは「全国と同じく、横浜でも農家が減っているなか、横浜でとれる野菜やそのおいしさを知ってもらう。また直売所などで買ってもらうことで農業を盛り上げていきたい」と答えた。
同席した組合員で食農教育マイスターの長澤佑典さん(40)は、市内でイチゴや多品目の野菜を栽培する。出張授業のほかにも、収穫イベントや小学校の菜園での栽培指導など、幅広く活動している。
「学校の先生ではなく農家の視点で色々な工夫や出荷方法を話し、『地産地消』の言葉も農家が発することによって、重みや実感が伝わると思う」と学生に語りかけた。
授業を受けた子どもたちがイチゴ狩りに来たり、大学生が農業ボランティアに来たりと、相手が一歩踏み出して行動を起こしてくれると、とてもうれしく、やって良かったと思うと話す。
一方、本来なら農作業にあてられる時間を割くことになるため、農家の参加を社会に大きく広げていく場合には、無償ではなく農家への対価も考慮に入れてほしいと指摘した。
早稲田大の小濱七海さん(2年)は「対面で直接、農家さんのリアルな思いを聞くことができたことが大きかった」と言い、気づいた点を生かしてプランをブラッシュアップしたいと話した。
■「マーケティングの視点からも面白い」
地域農産物の価値創造をテーマにする、もう一つの班が9月に足を運んだ先は、東京都練馬区の農家、洒井(さかい)雅博さん(40)の畑だ。46アールでブルーベリーの体験農園、トマトのハウス栽培、露地野菜を作る。主な出荷先は地元のスーパーや直売所。生産から販売までを手がける都市農家だ。
作付けする品種は、仲間の農家や客からの感想、スーパーの担当者の情報などを参考にしながら、考えているという。早稲田大の竹内悠太さん(3年)は「客との距離が近く、流行や客の反応をダイレクトに素早く採り入れていて、マーケティングの視点からも面白い」とつぶやいた。
東京農業大の土田葉太郎さん(2年)は、洒井さんの「直売だと、傷などがある規格外品も、それに応じた値付けをして売ることができる」という話が印象に残ったという。
「B級品にはB級品なりの売り方があるというのは発見でした」。班では、大学生を対象にした農業インターンの企画を考えている。洒井さんに「学生が継続的に来るとしたら、どんな仕事を任せたいか」「若い世代へのアプローチは」といった質問を重ね、プランの可能性を探っていた。
■スマート農業普及向けてアイデアも
スマート農業をテーマにした新しい事業モデルを検討する班の学生は、農林水産省が所管する研究開発法人「農研機構」を訪ねた。
農研機構ではAI(人工知能)や情報工学のノウハウを農業に生かすため、2018年からAI研究推進室を立ち上げている。室長の杉浦綾さんは、画像をもとに稲やジャガイモにつく害虫を瞬時に判別するソフトウェアなど、実用化された事例を紹介。学生からは、スマート農業に対する農家の導入意欲や、普及への課題などについて、様々な質問が出た。
学生が特に関心を寄せたのは、「スマート農業技術の研究開発現場と、実際に技術を使う農家との間でどんなギャップがあるか」だ。
杉浦さんは「技術的には可能でも、採算が取れなければ普及が難しいケースが多い」と説明。コストを抑えるため、運用に支障がない範囲で機能をそぎ落とすことに労力を注ぐこともあるとして、「開発段階から、利用者と継続的に対話をすることが重要だ」とも述べた。
スマート農業を広げるため、研究機関や企業と農家をつなげる拠点をつくる学生らの構想について、杉浦さんは「将来のユーザーとなる地域の農家が近くにいることで、開発中の技術の仕様や使い勝手が妥当かなど、有利に検証できる」と評価。同席した農水省の職員も「農業への参入を考える異分野の企業にとっても、農家の接点となるハブ機能として魅力がある」と話した。
訪問した学生のひとり、早稲田大の緑川凜さん(4年)は「訪問を通じて、自分たちの構想が抱える現実的な課題や、提供できる価値がより具体的に見えてきた。技術を実際の現場で役立つものにするには、農家の声を聞くのはもちろん、実証を重ねながら改良していくこともわかった」と話した。
■研究開発や青果の物流拠点も視察
7月上旬、プロジェクトに参加する学生のうち約20人が、神奈川県平塚市にある全国農業協同組合連合会(JA全農)の研究開発施設「営農・技術センター」を見学した。農業に関する技術開発の現場を間近に見ることでプロジェクトに役立てるねらいだ。
センターでは、新しい肥料や農薬の開発から土壌分析、農産物の残留農薬の検査まで、農業に関わる様々な研究や関係者向けの研修をしている。
学生らは、コメの新品種などを育てる実証水田や、各地で取れる農産物の品質を分析したり、残留農薬を検査したりする設備などを見学。職員の説明を聞きつつ、熱心にメモを取っていた。隣接するJA全農の青果を扱う大規模な物流拠点にも足を運んだ。
「地域農産物の価値創造」をテーマに、子ども向けのワークショップを通じて地元でとれた野菜の魅力を広めるプランを練っている班は、9月にJA横浜を訪れた。
JA横浜は、横浜市内の小学校への出張授業など、食農教育に積極的だ。組合員の農家が授業に出向く場合も多く、活動に参加する組合員を支援する「食農教育マイスター」制度をJA独自に設け、約200人が登録している。
「食農教育の狙いは?」という学生の質問に、組織生活課次長の冨田司さんは「全国と同じく、横浜でも農家が減っているなか、横浜でとれる野菜やそのおいしさを知ってもらう。また直売所などで買ってもらうことで農業を盛り上げていきたい」と答えた。
同席した組合員で食農教育マイスターの長澤佑典さん(40)は、市内でイチゴや多品目の野菜を栽培する。出張授業のほかにも、収穫イベントや小学校の菜園での栽培指導など、幅広く活動している。
「学校の先生ではなく農家の視点で色々な工夫や出荷方法を話し、『地産地消』の言葉も農家が発することによって、重みや実感が伝わると思う」と学生に語りかけた。
授業を受けた子どもたちがイチゴ狩りに来たり、大学生が農業ボランティアに来たりと、相手が一歩踏み出して行動を起こしてくれると、とてもうれしく、やって良かったと思うと話す。
一方、本来なら農作業にあてられる時間を割くことになるため、農家の参加を社会に大きく広げていく場合には、無償ではなく農家への対価も考慮に入れてほしいと指摘した。
早稲田大の小濱七海さん(2年)は「対面で直接、農家さんのリアルな思いを聞くことができたことが大きかった」と言い、気づいた点を生かしてプランをブラッシュアップしたいと話した。
■「マーケティングの視点からも面白い」
地域農産物の価値創造をテーマにする、もう一つの班が9月に足を運んだ先は、東京都練馬区の農家、洒井(さかい)雅博さん(40)の畑だ。46アールでブルーベリーの体験農園、トマトのハウス栽培、露地野菜を作る。主な出荷先は地元のスーパーや直売所。生産から販売までを手がける都市農家だ。
作付けする品種は、仲間の農家や客からの感想、スーパーの担当者の情報などを参考にしながら、考えているという。早稲田大の竹内悠太さん(3年)は「客との距離が近く、流行や客の反応をダイレクトに素早く採り入れていて、マーケティングの視点からも面白い」とつぶやいた。
東京農業大の土田葉太郎さん(2年)は、洒井さんの「直売だと、傷などがある規格外品も、それに応じた値付けをして売ることができる」という話が印象に残ったという。
「B級品にはB級品なりの売り方があるというのは発見でした」。班では、大学生を対象にした農業インターンの企画を考えている。洒井さんに「学生が継続的に来るとしたら、どんな仕事を任せたいか」「若い世代へのアプローチは」といった質問を重ね、プランの可能性を探っていた。
■スマート農業普及向けてアイデアも
スマート農業をテーマにした新しい事業モデルを検討する班の学生は、農林水産省が所管する研究開発法人「農研機構」を訪ねた。
農研機構ではAI(人工知能)や情報工学のノウハウを農業に生かすため、2018年からAI研究推進室を立ち上げている。室長の杉浦綾さんは、画像をもとに稲やジャガイモにつく害虫を瞬時に判別するソフトウェアなど、実用化された事例を紹介。学生からは、スマート農業に対する農家の導入意欲や、普及への課題などについて、様々な質問が出た。
学生が特に関心を寄せたのは、「スマート農業技術の研究開発現場と、実際に技術を使う農家との間でどんなギャップがあるか」だ。
杉浦さんは「技術的には可能でも、採算が取れなければ普及が難しいケースが多い」と説明。コストを抑えるため、運用に支障がない範囲で機能をそぎ落とすことに労力を注ぐこともあるとして、「開発段階から、利用者と継続的に対話をすることが重要だ」とも述べた。
スマート農業を広げるため、研究機関や企業と農家をつなげる拠点をつくる学生らの構想について、杉浦さんは「将来のユーザーとなる地域の農家が近くにいることで、開発中の技術の仕様や使い勝手が妥当かなど、有利に検証できる」と評価。同席した農水省の職員も「農業への参入を考える異分野の企業にとっても、農家の接点となるハブ機能として魅力がある」と話した。
訪問した学生のひとり、早稲田大の緑川凜さん(4年)は「訪問を通じて、自分たちの構想が抱える現実的な課題や、提供できる価値がより具体的に見えてきた。技術を実際の現場で役立つものにするには、農家の声を聞くのはもちろん、実証を重ねながら改良していくこともわかった」と話した。
■研究開発や青果の物流拠点も視察
7月上旬、プロジェクトに参加する学生のうち約20人が、神奈川県平塚市にある全国農業協同組合連合会(JA全農)の研究開発施設「営農・技術センター」を見学した。農業に関する技術開発の現場を間近に見ることでプロジェクトに役立てるねらいだ。
センターでは、新しい肥料や農薬の開発から土壌分析、農産物の残留農薬の検査まで、農業に関わる様々な研究や関係者向けの研修をしている。
学生らは、コメの新品種などを育てる実証水田や、各地で取れる農産物の品質を分析したり、残留農薬を検査したりする設備などを見学。職員の説明を聞きつつ、熱心にメモを取っていた。隣接するJA全農の青果を扱う大規模な物流拠点にも足を運んだ。