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「クマが来てくれた。うれしい」猟師が主催する植樹祭に参加して見えた山の課題と、再生後に広がる森の風景
2026.03.24
〈山にまつわるエトセトラ〉
西丹沢の猟師たちが主催する「奥山再生プロジェクト」が21日、神奈川県山北町の大野山山中で行われ、私も参加してきました。
「クマを里から奥山に返す」ため、丹沢にドングリを植えるベテラン猟師・杉本一(はじめ)さん(88)らの活動の一環です。
10年前に植えた木々がどうなっているのか、この日私たちが植えた木々でどんな山に変えていきたいのか?
杉本さんをはじめ、植樹祭に全国各地から参加したさまざまな人の話を聞き、考えました。(竹村和佳子)
◆100人募集のボランティア、予約開始12分で枠が埋まる
この日のイベントは、交流サイト(SNS)などでボランティア100人を募ったところ、予約開始からわずか12分で枠が埋まってしまったという。
杉本さんの狩猟仲間で、活動を引き継いだ民間狩猟グループ「豊猟会」の豊田里己会長(67)は「本当にびっくり。100人なんて集まらないだろうと思っていた。締め切り後も参加したいという書き込みが多数あったが、スタッフ側の人数を考えるとこれ以上増やすのは難しく…」と、注目度の高さにうれしい驚きだ。
100人のボランティアには、関東・中部のみならず北海道、岩手、山形、福島、兵庫からも参加者がいた。小さい子ども連れの家族も何組かいた。
山形市から夜行バスで駆けつけた仁藤伊代子さん(53)は、昨年クマ問題についてSNSで情報を集めていてこの活動を知ったという。こういうイベントに参加するのは初めてだが、「地元では今まで起きていなかったところで水害が起きたりしている。それも山の荒廃が原因だという。地方の山もメガソーラーなどで切り開かれて、今後はこういう活動が起こるんじゃないかと思い、勉強したいと思って」と、参加理由を語った。
◆桃や栗の木、ドングリがなる苗木を手分けして植樹
今回植樹が行われた大野山はハイキングコースとしても人気だが、植樹が行われたのは一般登山道から離れ、林道を奥に入った所にある。2班に分かれ、私を含む50人は背丈ほどの高さの桃や栗の木を1本ずつ、日当たりのいい斜面に4、5メートル間隔に植えた。「この辺りは、来年は柿を植えて果樹の森にする」と豊田さん。
別班はさらに車で15分ほど奥に入った場所で、高さ50センチほどのクヌギやコナラなどドングリがなる苗木を1人10本ずつ植えたという。
私たち果樹班は作業後、別班のいる奥山に移動した。ここに杉本さんや豊田さんが「見せたい」という木があった。
この山は以前、杉本さんが約4万本のクヌギを植えた場所。当時、知人に声をかけてドングリを集め、苗木にして植えたが、なかなか実がならなかったのだという。
人手で植えても実らせるのは難しいのだろうか…残念に思っていたところ、昨年10年目で初めてドングリがなった。しかも豊作。そして、今年植樹会の準備で訪れた時、クマが訪れた痕跡がいくつも見つかった。
その木の前に我々を誘導し、豊田さんと杉本さんが説明した。
「クマが訪れたことがわかるのは、途中で枝が不自然に折れているから。クマは木に登って幹を背にし、枝を自分の方に引き寄せ実を食べる。だから、枝が内向きに折れているし、まだ葉が茂っていた9、10月頃に枝を折ったから葉は付いたまま枯れている。台風や風で木が折れた時はこうはならない」
「人が植えた木でもちゃんと実がなって、クマが食べに来た。それが本当にうれしい。ここに食べられる実があるということを、クマも分かっただろうから、毎年ここに食べに来る」
4万本の苗木を植えても、全部が木として育つわけではない。根付かなかったり枯れたり、折れたりもしただろう。その空いたところを埋めるように昨年1500本、今回2000本の苗木を「補植」した。
今はまだ、細い木ばかりだが、この山頂はいずれ一面のドングリ山になり、クマが木に登って実を食べる…そんな光景が想像できた。
◆「地元のドングリで山を再生。もっと広がってほしい」
今回もっとも遠くから参加したのは、北海道恵庭市在住の髙橋立(りゅう)さん(28)。神奈川県相模原市の出身だが、自然や物作りが好きで大工になり、仕事の関係で4年前に北海道に移住した。
今回のプロジェクトを知ったのはやはりSNS。いずれ家具づくりもやりたいという夢があって木について勉強したり、林業や馬搬(木材を馬に引かせて山から搬出すること)への従事も考えている。
「今日は本当に楽しかったし、やってみて大変さも感じた。針葉樹の植林を伐採して原生林に戻そうという活動は聞いた事があったが、時間がかかる。地元のドングリを集めて山を再生しようというのはいいこと。もっと広がってほしい」などと興味津々だった。
◆「クマ対策だけではない」植樹の効果とは
杉本さんが一人で行ってきた植樹活動は、狩猟仲間が引き継ぎ、昨年初めてボランティアが参加する植樹祭になった。今回は2度目。来年は参加者を200人に増やす方向だという。
「木を植えるのはクマ対策だけではない。針葉樹の人工林は挿し木で増やしたため根が浅く、落葉しないので地面が固くて保水力がない。だから、すぐ木が倒れたり土が流れたりする。その点、クヌギ(落葉広葉樹)は葉が落ちるから、明るいし、枯れ葉が積もった腐葉土で地面がふかふかしている。こういう山にすることで、山の保水力も変わる」
「この冬、丹沢湖(三保ダム)の渇水はひどく、貯水率は3割ほど。それを目の当たりにして、やはりクヌギのような木を植えることが大事だとあらためて感じた。丹沢の森は神奈川県の水源。横浜、川崎の人たちにも自分たちの飲み水と直結した問題だと知ってほしい」
豊田さんはこう訴える。杉本さんのクヌギの森が10年かけてやっと実ったように、山が変化するには時間がかかる。「桃栗三年柿八年」のことわざもある。それでも、始めなければ変わらない。
なんで猟師が?とよく聞かれるそうだが「山のことも動物のことも、一番よく知っているのが猟師。だから我々が動かないと」。
長く続けていきたいが、今後の課題は用地。町域の9割を山林が占める山北町は彼らの考えに賛同し、活動の窓口になったり財産区を用地に提供したりしているが、丹沢山地の大半は国や自治体が管理していたり、私有地で簡単に木を切ったり植えたりはできない。
「最終的な目標は国を動かしたい。山のほとんどは国有林なのだから」。猟師たちの「奥山再生プロジェクト」は、まだ始まったばかりだ。
西丹沢の猟師たちが主催する「奥山再生プロジェクト」が21日、神奈川県山北町の大野山山中で行われ、私も参加してきました。
「クマを里から奥山に返す」ため、丹沢にドングリを植えるベテラン猟師・杉本一(はじめ)さん(88)らの活動の一環です。
10年前に植えた木々がどうなっているのか、この日私たちが植えた木々でどんな山に変えていきたいのか?
杉本さんをはじめ、植樹祭に全国各地から参加したさまざまな人の話を聞き、考えました。(竹村和佳子)
◆100人募集のボランティア、予約開始12分で枠が埋まる
この日のイベントは、交流サイト(SNS)などでボランティア100人を募ったところ、予約開始からわずか12分で枠が埋まってしまったという。
杉本さんの狩猟仲間で、活動を引き継いだ民間狩猟グループ「豊猟会」の豊田里己会長(67)は「本当にびっくり。100人なんて集まらないだろうと思っていた。締め切り後も参加したいという書き込みが多数あったが、スタッフ側の人数を考えるとこれ以上増やすのは難しく…」と、注目度の高さにうれしい驚きだ。
100人のボランティアには、関東・中部のみならず北海道、岩手、山形、福島、兵庫からも参加者がいた。小さい子ども連れの家族も何組かいた。
山形市から夜行バスで駆けつけた仁藤伊代子さん(53)は、昨年クマ問題についてSNSで情報を集めていてこの活動を知ったという。こういうイベントに参加するのは初めてだが、「地元では今まで起きていなかったところで水害が起きたりしている。それも山の荒廃が原因だという。地方の山もメガソーラーなどで切り開かれて、今後はこういう活動が起こるんじゃないかと思い、勉強したいと思って」と、参加理由を語った。
◆桃や栗の木、ドングリがなる苗木を手分けして植樹
今回植樹が行われた大野山はハイキングコースとしても人気だが、植樹が行われたのは一般登山道から離れ、林道を奥に入った所にある。2班に分かれ、私を含む50人は背丈ほどの高さの桃や栗の木を1本ずつ、日当たりのいい斜面に4、5メートル間隔に植えた。「この辺りは、来年は柿を植えて果樹の森にする」と豊田さん。
別班はさらに車で15分ほど奥に入った場所で、高さ50センチほどのクヌギやコナラなどドングリがなる苗木を1人10本ずつ植えたという。
私たち果樹班は作業後、別班のいる奥山に移動した。ここに杉本さんや豊田さんが「見せたい」という木があった。
この山は以前、杉本さんが約4万本のクヌギを植えた場所。当時、知人に声をかけてドングリを集め、苗木にして植えたが、なかなか実がならなかったのだという。
人手で植えても実らせるのは難しいのだろうか…残念に思っていたところ、昨年10年目で初めてドングリがなった。しかも豊作。そして、今年植樹会の準備で訪れた時、クマが訪れた痕跡がいくつも見つかった。
その木の前に我々を誘導し、豊田さんと杉本さんが説明した。
「クマが訪れたことがわかるのは、途中で枝が不自然に折れているから。クマは木に登って幹を背にし、枝を自分の方に引き寄せ実を食べる。だから、枝が内向きに折れているし、まだ葉が茂っていた9、10月頃に枝を折ったから葉は付いたまま枯れている。台風や風で木が折れた時はこうはならない」
「人が植えた木でもちゃんと実がなって、クマが食べに来た。それが本当にうれしい。ここに食べられる実があるということを、クマも分かっただろうから、毎年ここに食べに来る」
4万本の苗木を植えても、全部が木として育つわけではない。根付かなかったり枯れたり、折れたりもしただろう。その空いたところを埋めるように昨年1500本、今回2000本の苗木を「補植」した。
今はまだ、細い木ばかりだが、この山頂はいずれ一面のドングリ山になり、クマが木に登って実を食べる…そんな光景が想像できた。
◆「地元のドングリで山を再生。もっと広がってほしい」
今回もっとも遠くから参加したのは、北海道恵庭市在住の髙橋立(りゅう)さん(28)。神奈川県相模原市の出身だが、自然や物作りが好きで大工になり、仕事の関係で4年前に北海道に移住した。
今回のプロジェクトを知ったのはやはりSNS。いずれ家具づくりもやりたいという夢があって木について勉強したり、林業や馬搬(木材を馬に引かせて山から搬出すること)への従事も考えている。
「今日は本当に楽しかったし、やってみて大変さも感じた。針葉樹の植林を伐採して原生林に戻そうという活動は聞いた事があったが、時間がかかる。地元のドングリを集めて山を再生しようというのはいいこと。もっと広がってほしい」などと興味津々だった。
◆「クマ対策だけではない」植樹の効果とは
杉本さんが一人で行ってきた植樹活動は、狩猟仲間が引き継ぎ、昨年初めてボランティアが参加する植樹祭になった。今回は2度目。来年は参加者を200人に増やす方向だという。
「木を植えるのはクマ対策だけではない。針葉樹の人工林は挿し木で増やしたため根が浅く、落葉しないので地面が固くて保水力がない。だから、すぐ木が倒れたり土が流れたりする。その点、クヌギ(落葉広葉樹)は葉が落ちるから、明るいし、枯れ葉が積もった腐葉土で地面がふかふかしている。こういう山にすることで、山の保水力も変わる」
「この冬、丹沢湖(三保ダム)の渇水はひどく、貯水率は3割ほど。それを目の当たりにして、やはりクヌギのような木を植えることが大事だとあらためて感じた。丹沢の森は神奈川県の水源。横浜、川崎の人たちにも自分たちの飲み水と直結した問題だと知ってほしい」
豊田さんはこう訴える。杉本さんのクヌギの森が10年かけてやっと実ったように、山が変化するには時間がかかる。「桃栗三年柿八年」のことわざもある。それでも、始めなければ変わらない。
なんで猟師が?とよく聞かれるそうだが「山のことも動物のことも、一番よく知っているのが猟師。だから我々が動かないと」。
長く続けていきたいが、今後の課題は用地。町域の9割を山林が占める山北町は彼らの考えに賛同し、活動の窓口になったり財産区を用地に提供したりしているが、丹沢山地の大半は国や自治体が管理していたり、私有地で簡単に木を切ったり植えたりはできない。
「最終的な目標は国を動かしたい。山のほとんどは国有林なのだから」。猟師たちの「奥山再生プロジェクト」は、まだ始まったばかりだ。